Local.Bizでも以前レポートした「SDGs(Sustainable Development Goals)」。2015年、国連加盟国193ヶ国の全会一致で採択されたSDGsは、17の大きな目標とその詳細が書かれた169項目からなる、持続可能な社会を実現するためのグローバル目標です。
この目標は、学生、女性、障害者、先住民、さまざまなセクターに所属する1,000万人が対象となったオンライン調査の意見を反映したもので、まさしく「市民によってできた世界的な目標」とも言えます。
共通の目標を持つことにより、SDGsは地域内や他国とのコミュニケーションを円滑にし、ブランディングにも役立つと言われています。内閣府も先日、SDGsを取り入れた取り組みを提案した29の自治体を「SDGs未来都市」として選定、その中から先導的な10事業を「自治体SDGsモデル事業」として選定したばかり。選定された事業には、上限4,000万円の補助金が交付されます。これによって、自治体内の社会貢献活動が活発化、市民へのSDGsの認知を高めることも期待できます。
自治体のSDGsへの取り組みも本格化しつつある今、どう取り組んでいいかわからない!そんな人にヒントをくれる一冊が、SDGsのアイディアが多数掲載された「未来を変える目標 SDGsアイディアブック」です。
「SDGsに取り組む先生や生徒を応援したい!」から始まったプロジェクト
この本の主な配布先である学校では、2017年には教育指導要領の改訂が行われ、新指導要領に「持続可能な社会の創り手の育成が学校の役割である」と明記されていることもあり、授業でどうやって取り組めばいいか、頭を悩ませている先生が多くいました。
そこで、2003年から社会問題をテーマにしたビジュアルブックをつくり、学校に届けてきた一般社団法人Think the Earthは、2017年度からSDGsを学ぶための教育コンテンツづくりや、サステナビリティ教育を推進する先生や生徒を応援するプロジェクト「SDGs for School」をスタート。クラウドファンディングを立ち上げ約500万円を調達し、「未来を変える目標 SDGsアイディアブック」の出版を実現しました。
出来上がった本は一般の書店で販売するとともに、希望する中学校や高校に、1校あたり40冊を寄贈するプログラムを先着100校限定で募集したところ、SNSと口コミだけで220校から募集が集まりました。SDGsの関心度の高さが伺えるほどのたくさんの応募に、プロジェクトメンバーの皆さんも驚いたそう。その後も、希望する学校からの声が続々と届いているそうです。
読んだ人の心が動き、体も動かしたくなる本に。面白マンガとインフォグラフィックで誰でもわかるSDGs
暗記して思考が停止してしまうより、読んでいる人の心が動き、次のアクションが生まれることを大切にしたい。そんな理由からビジュアルにこだわった本の導入には、ロビン西さんによるコミカルなマンガが描かれており、誰でも親しみやすく、入りやすいものに工夫されています。
さらに、SDGsの目標一つひとつをインフォグラフィックとテキストで簡潔に説明。世界の面白い事例とともに、わかりやすく紹介されています。読んでいてより詳しい内容が知りたい!という人でも、ページ上部にあるQRコードからWEBサイトにアクセスでき、深い内容を調べることもできるようになっている、というこだわりようです。
この本の序文を書いた国連広報センター所長の根本かおるさんは、まさしくこういう本を待っていた!と話します。
「MDGs(Millennium Development Goals)は、途上国の社会開発のための世界目標でしたが、SDGsはすべての国にとっての目標です。SDGsを通して、自分たちの好事例や教訓を世界とシェアできる、逆に他国のものから学ぶこともできるのです。これはひとつの共通の座標軸であり、共通言語でもあると思います。
SDGsは、未来を生きていく子どもたちにとっても、世界に出るときのひとつの強みになると思います。これは、続かなくなりつつある地球を、続く地球にするための処方箋でありますが、子どもたちがポジティブな遺産となるようSDGsを学び、そして2018年を生きる世代が、SDGsによって勇気ある行動をとった世代となることを願っています」
誰でもSDGsの主体者になれる。自分と世界のつながりを学び、身近なところから実践する授業
この本を取り扱う予定となっている授業には、総合学習、理科、社会、国際理解、道徳、美術、保健体育など、さまざま。「身近なところから何かを変えていこうという考えに到達できるような授業をしたい」「生徒自身がSDGs達成の主体者であることを意識しながら学ばせたい」「グローバルマインドの芽生えを目指したい」といった先生からの声も発表され、授業にかける先生たちの熱量も感じられました。
「取り組んでいる教科からSDGsを見てみると、その学びの延長線上に世界課題があって、それをもう一回地元に置き換えてみると、本当に身近なところにたくさんの課題が転がっていて、自分たちができることがたくさんあることに気づかされます」
実際に本を使用して出張授業を行なった都立高校・中学校の教諭で教育デザイナーの山藤旅聞先生も、そのように話していました。山藤先生と山本先生ふたりで行なっているアクティブラーニング型授業では、教室とリアルな社会をつなげることを目的に、子どもたちと大人をつなげる機会や、子どもたちが実際にアクション出来る学びの場づくりをしています。
さらに今回は、先生たちの授業やSDGs for Schoolのイベントでつながった高校生たちによる、SDGsを広げる活動の報告も行われました。今では、国立・私立・都立10校の生徒たちが有機的につながり、さまざまなアクションを行っているそうです。学生さんたちよるアクションは、また改めてご紹介したいと思います。
誰ひとりとして取り残さない世界を、みんなで一緒に
最終的には、一次募集と二次募集合わせ、なんと8,000冊もの本が全国の学校に届けられる予定です。この本を読んだ子どもたちは、今後どんな大人になっていくのでしょう?楽しみでなりません。
「今後は全国の先生を繋いだり、生徒と地域を繋いだり、繋ぐというフェーズに入っていきたいと考えています。そして、これからの世界をもっと良い世界にするために、みなさんと一緒に未来をつくっていきたいと思います。ありがとうございました」
この本を発行した一般社団法人Think the Earthの上田壮一さんは、最後にそう締めくくりました。
この本は、先生や生徒が教科書として使えるだけでなく、個人のアクションのヒントをもらえたり、仕事のインスピレーションを得ることができたりと、大人にとっても役立つ本になっています。
まずは自治体で、小学校で、中学校で、SDGsアイディアブックを取り入れてみることから始めてみませんか?
SDGs for Schoolの最新情報はこちら↓
http://www.thinktheearth.net/sdgs/
1984年東京都武蔵野市生まれ。2011年の震災をきっかけに、当時の働き方や社会の持続可能性に疑問を持ち、ライターに転身。さまざまなメディアで「SDGs」や「サステナビリティ」を紹介する記事を執筆。また、SDGsの学びのコミュニティ「ACT SDGs」を企画。プロジェクト立ち上げも行う。